感染症を心配する妊婦

2歳までにほぼ100%の子どもが感染するとされる「RSウイルス感染症」。乳幼児の約30%が重症化するといわれていますが、妊娠24週〜36週の間に接種できるワクチンで感染を予防することができます。 

【監修】
一般社団法人 マザーアンドチャイルド協会
 森岡一朗 先生

身近なところで感染するRSウイルス感染症

特に生後6カ月頃までの赤ちゃんは注意が必要

RSウイルス感染症とは、RSウイルスによる急性呼吸器感染症のことで、子どもからお年寄りまで生涯を通じて何度も感染を繰り返します。症状は、発熱や鼻水などの風邪に似たものから重い肺炎までさまざまですが、初感染の約30%が重症化するといわれており、特に生後6カ月頃までの赤ちゃんは注意が必要です。特効薬がないため、症状をやわらげるための治療が行われることが一般的で、重症化して下気道炎(せき・胸痛・呼吸困難など)を起こすと入院が必要なこともあります。 

RSウイルス感染症の感染経路

RSウイルス感染症の感染経路は、接触感染と飛沫感染の2つがあります。接触感染とは、感染している人の皮膚や粘膜を触ったり、ウイルスが付着したもの(ドアノブ・手すりなど)に触れたりした手で、自分の口や鼻に触れることによって感染することをいいます。飛沫感染は、感染している人のせきやくしゃみから飛び散るしぶきを浴び、吸い込むことによって感染することです。家庭、保育園、公園などさまざまな場所で感染するリスクがあると言えます。 

これまでRSウイルス感染症は秋から冬にかけて流行するといわれていました。しかし、近年では流行のピークが春~夏へ移行しています。流行するタイミングは地域ごと、年ごとに異なり、1年を通じて感染する可能性があります。 

RSウイルス感染症の発症の中心は0歳児と1歳児

RSウイルス感染症の発症の中心は0歳児と1歳児です。生まれて間もない赤ちゃんに重症化のリスクがあるのに対し、2 回目以降の感染は早期に軽快することも多いため、RSウイルス感染症であることに気付かない年長児や大人もいると考えられます。 

このため、RSウイルスに感染している可能性がある人は、できるだけ赤ちゃんとの接触を避けることが感染予防につながります。マスクの着用や、手指や赤ちゃんが触れるおもちゃなどの消毒も感染予防に効果的です。 

ワクチンを打つ女性

RSウイルスワクチンを接種できるのは妊娠24週〜36週

基本的な感染対策に加えて、妊娠中にワクチンを接種し、生まれて間もない赤ちゃんをRSウイルス感染症から予防する方法があります。妊娠中にRSウイルスワクチンを接種すると、胎盤を通じてお腹にいる赤ちゃんへと抗体が移行し、生まれてきた赤ちゃんがRSウイルスに感染したり重症化したりすることを防ぐ効果が期待できます。 

ワクチン接種の対象は妊娠24週~36週の妊婦さんで、特に妊娠28週~36週での接種が推奨されています。赤ちゃんの健やかな成長のためにも、RSウイルス感染症のことを正しく知り、早めに備えましょう。
接種を検討されている方は、余裕をもって医師へご相談ください。 

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