
「RSウイルス感染症」は2歳になるまでに、ほぼすべての子どもが感染するとされていますが、特に生後6カ月頃までの赤ちゃんは症状が重くなりやすいです。妊娠24週〜36週の間に接種できるワクチンで、生まれてくる赤ちゃんを感染から守りましょう。
【監修】
一般社団法人 マザーアンドチャイルド協会 森岡一朗 先生
RSウイルス感染症の5つの特徴
RSウイルス感染症は、RSウイルスによる急性呼吸器感染症のことで、2歳になるまでにほぼすべての子どもが感染するとされています。症状は、発熱や鼻水などの風邪に似たものから重い肺炎までさまざまですが、初感染の約30%が重症化するといわれています。特効薬がないため、症状をやわらげるための治療が行われることが一般的で、重症化すると入院が必要な場合もあります。
①潜伏期間4~6日
感染してから4~6日の潜伏期間(症状のない期間)の後、発熱や鼻水などの症状が現れます。また、潜伏期間を含めて1カ月ほど感染力が続きます。
②初めての感染では約30%が重症化
RSウイルスには生涯で何度も感染しますが、初めての感染では症状が重くなりやすいといわれています。ひどい場合は下気道炎(せき・胸痛・呼吸困難など)を起こし、入院が必要になることもあります。
③RSウイルス感染で受診したお子さんの4人に1人が入院
RSウイルス感染症で医療機関を受診した2歳未満の子どものうち、約25%が入院したという報告があります。これは4人に1人の割合です。
④入院のピークは生後2カ月
RSウイルス感染症により入院した子どもの月齢で最も多かったのは生後2カ月、その次に多かったのは生後1カ月でした。また、入院した子どもの多くに基礎疾患はありませんでした。
⑤7歳時のぜんそく発症率が約10倍
RSウイルス感染症とぜんそくの発症には関連があるといわれています。海外の研究では、RSウイルス感染症で入院した経験がある子どもは、そうでない子どもと比較して、7歳時のぜんそく発症率が約10倍であったことが報告されています。
RSウイルス感染症の感染経路は、接触感染と飛沫感染の2つがあり、家庭、保育園、公園などさまざまな場所で感染するリスクがあります。そのため、RSウイルスに感染している可能性がある人はできるだけ赤ちゃんとの接触を避ける、マスクを着用する、手指や赤ちゃんが触れるものを消毒するなどの対策が、感染予防につながります。

妊娠24週〜36週のうちにRSウイルスワクチン接種を
基本的な感染対策に加えて、妊娠中にワクチンを接種し、生まれて間もない赤ちゃんをRSウイルス感染症から予防する方法があります。妊娠中にRSウイルスワクチンを接種すると、胎盤を通じてお腹にいる赤ちゃんへと抗体が移行し、生まれてきた赤ちゃんがRSウイルスに感染したり重症化したりすることを防ぐ効果が期待できます。
ワクチン接種の対象は妊娠24週~36週の妊婦さんで、特に妊娠28週~36週での接種が望ましいとされています。妊娠37週以降は接種対象ではありません。
赤ちゃんの健やかな成長のためにもワクチン接種を考えてみてはいかがでしょうか。接種を検討されている方は、お早めに医師へご相談ください。