医療技術の進歩により、早産児の多くが救命できるようになりました。小さな赤ちゃんは入院期間が長いですが、家族の一員として成長を見守っていきましょう。

熊坂栄先生
熊坂栄先生
東京かつしか赤十字母子医療センター 小児科 部長

26週以降出生児の9割以上は救命できるようになってきた

NICU(新生児集中治療室)では、早産児を救命するだけでなく、早産児に多い未熟児網膜症(もうまくしょう)の進行を防いだり、慢性肺疾患(まんせいはいしっかん)など呼吸器の合併症の悪化を防いだりして、「インタクトサバイバル(後遺症なき生存)」を目指す取り組みを行っています。からだの成長についても、積極的な栄養投与を行い、予定日に生まれた子と遜色(そんしょく)がないように育てようとする方針が主流となっています。

NICUを退院する目安は、一般的に、36〜37週以降に相当する週数になり、自分で哺乳(ほにゅう)ができること、酸素投与などの治療が必要ないことが条件です。退院後は、外来で発育・発達(首のすわり、寝返りなど)を評価するフォローアップが行われます。早産児は発育や発達が遅れる場合があるのは事実ですが、適切な発達支援につなげ、家庭での生活や集団生活への適応を目指していきます。

早産児のお父さんには、何よりまず、お母さんを支えてほしいです。早産で産んだお母さんは自分を責めがちですが、誰のせいでもないことを理解してください。そして、お父さん・お母さんともに、できるだけ面会に来ていただいて、赤ちゃんに触れたり抱っこしたりしてみてください。最初は、小さいし、細いし、触(ふ)れるのが怖いかもしれませんが、できるだけ触れあって、家族の一員として愛情を深めていただきたいです。赤ちゃんはたくましく成長していきます。哺乳ができるようになった、体重が増えてきた、目を開けてキョロキョロするようになったなど、赤ちゃんは日々変化していきます。早産でNICUに入院した赤ちゃんは退院まで数カ月を要することがありますが、赤ちゃんの日々の成長を楽しんでいると、「こんなに成長したのだから、家で育てるのも大丈夫」と退院後の育児に自信が持てるようになります。

早産の赤ちゃんにとって、母乳はいちばんの栄養です。生まれたてのときはなかなか母乳が出ないかもしれませんが、1滴、2滴でもいただければ、綿棒で口の中に塗布することもできます。一方で、搾乳(さくにゅう)がプレッシャーになって面会に行きづらいとは考えないでください。まず赤ちゃんに会っていただいて、親子の関係を育んでいただくのが何より大事だと考えています。