2回以上の流産・死産を繰り返す場合を不育症と呼びます。リスク因子(いんし)がわかれば、それに応じた治療を受けてください。

齋藤滋先生
齋藤滋先生
富山大学 学長

繰り返す場合はリスク因子(いんし)の検査を

流産は約15%の頻度(ひんど)で生じる、決してまれな現象ではありません。ただし、妊娠年齢が高齢になるにつれ、また過去の流産回数が多くなるにつれて、流産率は高くなります。たまたま1回流産した人は、ほとんどが偶発的なできごとで、心配はありません。心の落ちこみが回復したら、次回の妊娠を計画してください。

妊娠はするけれども、流産、死産などを2回以上経験する場合、不育症と定義されます。日本には1年間に約2~3万人の不育症患者が生じているため、累計すると数十万人の不育症例がいると推察されます。何らかの要因があるために流産や死産を生じている場合と、何のリスクもなく偶発的に流産を繰り返している場合があります。さまざまなリスク因子(いんし)の関与が考えられますので、検査を受けていただきたいと思います。リスク因子(いんし)が判明すれば、それに対する治療を受けてください。

検査をしても約65%の人には、何の異常も見つかりません。これらの人には、特段の治療は必要ありません。無治療でも次回の妊娠時には、良好な結果が得られています。ただし、家族や医療スタッフによる精神的支援が生児獲得率(子どもを持てる確率)を上昇させることが、国内外から報告されていますので、妊娠する前、妊娠してからの周囲の配慮や支援も必要です。

全国に不育症相談窓口が開設されていますので、お近くの市町村にお尋ねください。不育症の治療等に関する情報については、「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル2012」にくわしく掲載されていますので、ぜひ参考にしてください。

反復・習慣流産の相談対応マニュアル

[不育症のリスク因子(いんし)と治療法]
「頻度」は厚生労働省「不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究班」による