OSを入れ替えるつもりで育児に取り組もう!笑っているお父さんになって、家族といっしょに成長を。

安藤哲也先生
安藤哲也先生
NPO法人 ファザーリング・ジャパン ファウンダー/代表理事

はじめての子育てに戸惑(とまど)う父親たち

最近は育児に積極的な男性が増えました。世の中の大きな変化を実感します。「イクメン」という言葉も定着し、自宅で赤ちゃんのケアをしているお父さんは多いことでしょう。しかし父親も育児をするようになればいろいろなことで悩みます。育児というと、お風呂に入れたり、オムツを替えたり、夜、寝かしつけたりたりという「作業」を思いがちです。もちろんそうした育児の作業を父親も母親と同じようにできることは大事ですが、ここでは「産後におけるお父さんの役割」についての基本を伝えたいと思います。

子どもが生まれたら、父親OSを入れ替えよう

父親が育児に悩んだり、何となくぎこちないのは決して能力の問題ではなく、おそらく私たちの意識をはじめ社会全体がまだ古典的な男女役割分担意識に囚(とらわ)れているからです。つまり「外で働き、家族を養うこと」が父親の役割で、「育児は母親がやるもの」と思いこんでいる人はまだ少なからずいるのです。産後に必要なのはまず意識改革です。そういう私も20代の頃は好きな仕事に没頭(ぼっとう)していました。でも17年前に娘が生まれたとき、直感的に「育児って義務ではなく、楽しい権利なのではないか?」と思ったのです。子どものいる人生を目いっぱい楽しみたい。そのためにはまず「男は仕事。女が家事育児」といった古い価値観を捨てる。意識改革つまり自分の中のOS(オペレーティング・システム)を入れ替えねばと悟(さと)りました。OSが入れ替わると、男性も「仕事だけ」の生活から脱却(だっきゃく)でき、なるべく早く帰宅したり、土日も育児を妻と協業するようになりました。

私が主宰(しゅさい)するNPOの父親セミナーでは子どもが乳幼児のお父さんが多いですが、彼らの多くは平日やはり仕事で帰宅が遅く、「週末だけの父親」になっています。子どもと良好な関係を築きたいのであれば、毎日少しの時間でもいいから子どもに関わることが肝心です。でもやはり帰れないお父さんはぜひ両親学級や父親セミナーを積極的に受けてみてください。育休を取ったり、仕事と両立しながら子育てを楽しむ多様な父親の姿を知り、自分の中の古いOSが入れ替わることでしょう。

パートナーを支えることで間接育児を

もうひとつ忙しいお父さんたちにやってほしいことがあります。それは、「パートナーを支える」ということ。これは家事を分担するといったことだけではありません。日々、大変な子育てをしてくれている妻に感謝し、ねぎらいの言葉をかけてあげるといった精神的なケアが大事なのです。

例えば、夜遅く帰ったとき子どもがもう寝てしまっていても、パートナーがまだ起きていたら彼女の話を聴いてあげてください。赤ちゃんのお母さんは一日中、赤ちゃんといっしょに過ごし、家事に追われヘトヘトに疲れています。でも夫が帰宅するまで起きて待っていてくれるのは、「こんなことがあったの!」という子育ての感動、わが子の成長をパートナーと分かち合いたいのかもしれません。だから「ねえねえ、今日ね…」と語りかけてきたら、きちんとその言葉に耳を傾けてあげてほしいのです。

夫がそれをちゃんと受け止めてあげれば、「認めてもらえた」と安心し、パートナーの気持ちは満たされて、夜ぐっすり眠れます。そして翌朝、笑顔で子どもに向き合えるのです。その母親の笑顔こそが子どもの情緒(じょうちょ)を安定させ、健(すこや)かな精神を育むのです。

つまり、赤ちゃんのお母さんを支えることが立派な「間接育児」になっているのです。ぜひお父さんたちは、この視点を持ってください。パートナーが必要としているものは夫からの「受容」「共感」「賞賛」です。普段、多くの育児を担(にな)ってくれている妻に感謝し、精神的に支えることで夫婦の絆も強まり、新米お母さんの育児は楽しくなっていくのです。

笑っているお父さんになろう

今、子育て家庭を取り巻く多くの問題は、「産後の問題」に起因するといっても過言ではありません。この状況をみたとき、出産期の父親(男性)への指導や応援こそが、最大の母親支援・子育て支援になります。

男性本人だけでなく、父親にとって子育てがしやすい環境について、働き方を含め社会全体がもっとそのあり方を見直さなければなりません。育児に積極的な父親が増えれば日本の子育ては大きく変わるでしょう。笑っている父親こそが、夫婦のパートナーシップや子どもの自尊心を育(はぐく)み、家族がともに成長できるのです。男性の皆さん、周囲に流されることなく、信念をもって、父親であることを楽しむ生き方をぜひ実践してみてください。