外陰部と肛門の間を会陰と呼びます。分娩(ぶんべん)時の裂傷(れっしょう)などを予防するために、会陰切開が必要になるケースもあります。

加藤聖子先生
加藤聖子先生
九州大学病院 産科婦人科 教授
日高庸博先生
日高庸博先生
地方独立行政法人 福岡市立病院機構 福岡市立こども病院産科

会陰切開が必要かどうかは、分娩(ぶんべん)直前でないとわからない

分娩(ぶんべん)にともなう会陰裂傷(れっしょう)を予防し、分娩(ぶんべん)時間を短縮して、母体と赤ちゃんの安全を確保するために、あらかじめ会陰を小さく切開しておくことを会陰切開と呼びます。会陰裂傷(れっしょう)を防ぐために助産師が行う会陰保護は重要なのですが、適切に行っても会陰裂傷(れっしょう)が完全に防げるわけではありません。裂傷(れっしょう)がひどいと排便(はいべん)障害や性交時痛などの後遺症が残ることもありますから、生活の質の保持のためにも、会陰裂傷(れっしょう)の予防は重要と考えられます。

ほとんどの産婦さんに会陰切開が行われていた時代もありましたが、最近ではそれぞれの産婦さんの会陰の状態や分娩(ぶんべん)経過などに応じて必要性が判断され、選択的に行われることが多くなっています。会陰切開が必要かどうかの判断は、分娩(ぶんべん)の直前に行われることがほとんどです。

会陰切開を要する場面として、以下のようなものがあります。

① 会陰部の伸展(しんてん)(伸びること)が不十分で、複雑または高度な会陰裂傷(れっしょう)の発生が予想される場合

② 胎児の状態が思わしくなく、会陰部の抵抗が強くて胎児の頭がなかなか出てこない場合

③ 鉗子(かんし)分娩(ぶんべん)や吸引分娩(ぶんべん)などの必要がある場合

④ 巨大児分娩(ぶんべん)や肩甲(けんこう)難産(胎児の肩が恥骨(ちこつ)に引っかかって出られない)が予測される場合

⑤ 低出生体重児や頭蓋内疾患(とうがいないしっかん)を有する胎児で、胎児の頭への圧迫を軽減したい場合

通常は切開部に局所麻酔をしてから会陰切開を行いますが、分娩(ぶんべん)時の痛みのほうがはるかに強いため、麻酔をしなくても切開時の痛みは感じないという人も多いです。切開はハサミで行います。いくつか手法がありますが、主に正中(せいちゅう)切開と正中側(せいちゅうそく)切開のふたつです。正中(せいちゅう)切開法は会陰中心部から肛門に向かって縦にまっすぐ切開する方法です。出血が少なく、術後の痛みが軽度で、縫合(ほうごう)しやすく、傷の治癒(ちゆ)がよいことが特徴です。正中側(せいちゅうそく)切開は陰唇の一番下から肛門括約筋(こうもんかつやくきん)を避(さ)けて坐骨結節(ざこつけっせつ)に向けて斜(なな)めに切開する方法です。比較的出血量が多く、術後の痛みも強い傾向にあります。吸引分娩(ぶんべん)や鉗子(かんし)分娩(ぶんべん)などでは、ある程度大きな会陰切開が必要とされ、この切開法が用いられることが多くなります。会陰切開の傷は、分娩(ぶんべん)終了後に産道裂傷(れっしょう)全般の縫合(ほうごう)処置を行う中で、縫合(ほうごう)閉鎖します。近年では吸収糸という溶ける糸で縫合(ほうごう)を行うことが多く、必ずしも抜糸(ばっし)を要しません。