妊娠や分娩(ぶんべん)で異常があれば健康保険が使えますが、差額ベッド代や食費などで、負担額が大きくなることも。貯蓄や民間の医療保険で、もしもの場合への備えを。

竹下さくら先生
竹下さくら先生
ファイナンシャルプランナー / 千葉商科大学大学院 客員准教授

入院が長引けば負担が大きくなることも

初診の際、全額自己負担で思いのほかたくさんのお金がかかり、驚いた人も多いでしょう。妊娠すると、14回程度の健診を受ける必要がありますが、自治体からの健診費の助成制度があり、お金の心配は不要です( 1 参照)。逆に、異常妊娠・異常分娩(ぶんべん)のケースでは健康保険が使えますが、3割の自己負担がある上に、差額ベッド代など健康保険対象外の支出も重なるため、家計への負担感は想像以上に大きいといえます。

1.『妊婦さんを支える支援制度』

重いつわりや妊娠高血圧症候群、切迫流産(せっぱくりゅうざん)や切迫早産(せっぱくそうざん)などで、やむなく入院するケースは身近によくあります。例えば、切迫早産(せっぱくそうざん)と診断されると絶対安静が必要となり、医療機関に2〜3カ月間入院するケースもあります。3カ月もの入院となると、差額ベッド代などを含めて1日に1万円かかる例では、合計で100万円近い出費となる計算です。月当たりの医療費の支払い額に上限を設け、超過した分を健康保険が負担する高額療養費制度もありますが、差額ベッド代と食費は対象外です。

上のお子さんがいる場合は、家事や育児代の費用も別途かかってしまうこともあり、負担はさらに重くなります。また、最近は、出産の高齢化などの理由から帝王切開での出産が増えていることを耳にした人もいるのではないでしょうか。帝王切開となると、当然、入院期間は伸びます(おおむね10日程度)。診療費・手術費には健康保険がききますが、差額ベッド代などの負担があるのは同様です。ただ寝ているだけなのに日々負担がかさんでいく状況は、精神衛生上よくないので、せめて金銭面の事前対策は講じておきたいところです。

具体的には、まとまった貯蓄を用意しておくほか、民間の「医療保険」に入っておくのも一策です。入院給付金や手術給付金が受け取れるので、金銭面での不安を減らし、治療に専念できるメリットがあります。ただ、「医療保険」には“入り頃”があり、妊娠したことがわかる前に契約するのがベストタイミングです。妊娠がわかってからでは、契約の申し込みを断られたり、今回の妊娠・出産のトラブルに関わる入院・手術については保障対象外にするといった条件が付いた契約とされてしまうことが多いので、注意が必要です。