宮崎大学医学部附属病院 主任教授 桂木真司
- 妊娠中は免疫機能が変化し、感染症にかかりやすい時期
- 赤ちゃんに影響する感染症(母子感染)に注意が必要です
- ワクチンで防げる感染症も(妊娠中に接種できるもの、できないものがある)。家族も含めて対策を
日常に潜むトキソプラズマの原因
家庭菜園

生肉

ネコのフン

母子感染から赤ちゃんを守るため 健診をしっかり受けましょう
妊娠中の感染症には、母から子へ感染が広がるき「母子感染」を起こすものがあります。ウイルスや寄生虫が胎盤を通じて赤ちゃんに移行したり(胎内感染)、産道を通る際に感染したり(産道感染)、母乳からうつる場合もあります。しかし、母乳を介して感染する場合もありますが、そのような感染症は一部に限られ、ほとんどの感染症では母乳育児は安全です。
風疹、トキソプラズマ、梅毒などは、赤ちゃんの発育や臓器の働きに影響が出る(先天異常)可能性があり、特に注意が必要です。母子感染のリスクを早期に発見するため、妊婦健診では妊娠初期に必ず血液検査(抗体検査)を行います。万一感染していた場合の早期治療や予防のため、健診をしっかり受けることが、赤ちゃんを守る第一歩です。
手洗い、換気、マスク、 咳エチケット、ワクチン。基本の感染対策の徹底を
妊娠中は免疫機能が変化するため、病気に感染すると重症化しやすいことがわかっています。母子感染を起こすもの以外でも、インフルエンザや新型コロナ(COVID-19)など、季節的に流行する感染症にも注意しましょう。
病原体を身体にいれないことが予防の基本です。まずは「手洗い」を徹底し、人混みを避け、マスクの着用や換気を意識しましょう。
妊娠中でも接種が推奨されるワクチン(インフルエンザ・COVID-19)があります。一方、風疹やはしか(麻疹)、みずぼうそう(水痘)など妊娠中に接種できないワクチンもあります。医師に相談しながら適切な時期に接種しましょう。
妊娠中、特に気をつけたい感染症
風疹
妊娠20週頃までに感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんにも感染し、難聴、心疾患などを引き起こす「先天性風疹症候群」の危険が。ワクチンで防げますが、「生ワクチン」のため、妊娠中は接種できません。抗体が低い場合、家族が接種し、妊婦さんを守ることが重要です。
トキソプラズマ
生肉やネコのフン、土にいる寄生虫。妊娠中に初めて感染すると、赤ちゃんの目や脳に障害が出たり、発達に影響が生じたりすることが。肉は中心部までよく加熱し、土いじりやネコのトイレ掃除は手袋を着用の上、終了後には徹底した手洗いを心がけましょう。
梅毒
近年急増中の性感染症。胎盤を通じて赤ちゃんにも感染し、「先天梅毒」を引き起こすことが。流産や死産の原因になるほか、骨の異常や皮膚症状、発達の遅れなど、重い障害を残すことがあります。早期なら薬で治療できるため、パートナーと一緒に治療することが重要です。
RSウイルス
風邪の一種ですが、妊婦さんでは発熱や呼吸症状が強く出ることがあり、注意が必要です。新生児や乳児が感染すると重い肺炎になるケースも。妊娠後期(28 ~ 36週)に妊婦さんがワクチンを接種し、抗体を赤ちゃんに渡して守る予防法もありますが、接種できる条件や実施状況は医療機関によって異なります。まずはかかりつけ医に相談を。
流行に注意したい感染症
サイトメガロウイルス
妊娠中の初感染は、流産のリスクのほか、難聴などの障害が残るおそれが。子どもの唾液や尿に多く含まれるので、上の子がいる人はおむつ替え後に手洗いし、食器の共有を避けましょう。
インフルエンザ
インフルエンザワクチンは妊娠中も接種が可能。お母さん自身の重症化を防ぐだけでなく、赤ちゃんへの感染リスクを減らす効果も報告されています。家族で早めにワクチン接種を。
新型コロナ(COVID-19)
特に妊娠後期(28週以降)は重症化リスクが高まるほか、 早産のリスクも高まります。時期を問わずワクチン接種が推奨されています。家族も接種し、家庭内感染を防ぎましょう。
はしか(麻疹)
感染力が非常に強く、妊娠中に感染すると流産・早産のリスクが。生ワクチンのため、妊娠中は接種できません。地域で流行している場合は外出を控えるなどして、感染予防を。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
妊娠初期に感染すると、流産の割合が高くなるという報告があります。生ワクチンのため、妊娠中は接種できません。基本の感染対策を徹底し、産後の接種を検討しておきましょう。
みずぼうそう(水痘)
妊娠中、特に出産の直前に感染すると産道を通じて赤ちゃんにも感染し、重症の水痘になる危険が。こちらも生ワクチンのため妊娠中の接種は不可です。産後の接種を検討しましょう。

