パートナーの妊娠で、喜びとともに不安や戸惑(とまど)いを感じることもあるかもしれません。おたがいに思いやりを忘れずに、新しい命をともに育(はぐく)みましょう。

木戸道子先生
木戸道子先生
日本赤十字社医療センター 第一産婦人科 部長

妊娠をいっしょに喜ぶことからはじめましょう

パートナーが最初にできることは、「妊娠」をいっしょに心から祝福するということです。何となく照れくさくて、「おめでとう、楽しみだね」の一言が素直(すなお)に伝えられなかった、という場合もあることと思います。今からでも遅くはありません。パートナーに誕生を心待ちにしている気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。

なかには、赤ちゃんの誕生を不安に思う男性もいるでしょう。「部屋が狭(せま)いのではないだろうか」とか「経済面でちゃんとやっていけるのだろうか」といった心配ごとを持つのはある意味当然です。親になるという責任の大きさに、しっかりしなければと前向きに考えることもあれば、いろいろと不安になってしまうこともあるでしょう。

お産を乗り越えて誕生を迎えたときには、ふたりで力を合わせて育てていこうという気持ちになり、頼もしいお父さんになることができるものです。子育てには苦労もあるかもしれませんが、自分が子どもだったときの思い出にまた出会える、普段にはない新鮮な経験ができる、など楽しいこともたくさんあるものです。自分の子どもができることで、子どもたちが育っていく未来がより身近になり、環境、教育、政治など、さまざまな社会問題に関心が深まったという人も少なくありません。子どもといっしょに親も「育ち合う」ことができたらいいですね。

つわりや体調の変化などでパートナーが不安やつらさを感じている時期には、できるだけサポートに努(つと)めましょう。つわりで食べ物がのどを通らない、不安のあまりメソメソしてしまう、ちょっとしたことで怒ってしまう。急激な体調の変化におそわれ、妊婦さんは本当に大変です。そばにいて話を聞いてもらい、不安を受けとめてもらうだけでも心強いものです。

おたがいに不満やわだかまりも、ときにはあるかもしれませんが、いつも思いやりを忘れず、安産に向けて「伴走(ばんそう)する」つもりで新しい命をともに育みましょう。自治体や産院が開催する両親学級などに参加して情報を集め、出産育児について学ぶのもおすすめです。赤ちゃんが生まれたら、おむつ替(か)えやお風呂など赤ちゃんのお世話、買い物や掃除(そうじ)などの家事をできるだけ分担(ぶんたん)し、一日のできごとや赤ちゃんの様子を語り合う時間を持てるとよいですね。